葛川明王院の絵図は、葛川与伊香立庄相論絵図というそうで、葛川と伊香立庄との境界争いのために描かれた。文保元年(1317年)に作成された下絵みたいな絵図と文保2年(1318年)に作成された彩色のものがある。絵図の解釈については、「絵図のコスモロジー」という本に詳しい。
葛川明王院は滋賀県大津市にあり、比叡山にある延暦寺東塔無動寺の奥の院とのこと。その古い絵図。
絵図の右側には全体に木々が描かれ、中心には朱色で「秘所滝」と記されてある。この木々は、前年に描かれた下絵みたいな絵図にはなかったものだそうで、境界を主張する際にポッカリと何もない空間があると不都合だったのか、描き足されたとのこと。
この葛川明王院の絵図に描かれた「秘所滝」を見に行った。絵図のコスモロジーには、秘所滝があると思われるサカ谷を遡行して、確かに滝があることを確認したと記載されており、やっていることに新規性はない。
サカ谷の遡行
サカ谷の出合いに崩坂改修記念碑の石造物と案内板がある。絵図の「秘所滝」がある木々の右側に「崩坂西ノ横尾」、登った峠に「クツレ坂ノタウケ堂」と朱色でかかれており、「秘所滝」がある谷がサカ谷である根拠の一つになっている。
崩坂を登ってみると薄っすらとつづら折りの踏み跡があり、かつて道があったようにも見えた。峠まで登ってみたが、石造物などは何もなく、お堂跡なども見当たらなかった。
秘所滝
サカ谷には滝と言えるものは一つしかなかった。二段になっており、一段目は何でもない8mほどの滝だが、二段目の滝はトイ状で滝つぼの周囲を岩場で囲われており、少し神秘的な滝に感じた。
そのまま遡行を続けると、何もなく次第に水量も減り、稜線に至る。隣のヘク谷などは沢登りの対象となっているみたいだけど、サカ谷は面白味に欠けるためか、余り聞かない。「秘所滝」と思われる滝を見に行くだけでも、価値はあるような気はする。