2023年12月5日火曜日

高山寺絵図のもの探し①

寛喜二年(1230)に寺領を示す目的で作成された神護寺領牓示絵図、高山寺寺領牓示絵図、主殿寮御領小野山与神護寺領堺相論絵図の三幅の絵図。いずれも重要文化財になっている。

絵図の研究はたくさんされているが、描かれた滝や岩場などの地物の中には現地比定されていないものがあり、探してみることに意味があるかもしれない。

絵図の中で特にきれいなのが高山寺絵図。高山寺は紅葉で有名な京都の栂尾にあり、夢記の明恵上人、石水院や鳥獣戯画で有名なお寺。
絵図は高山寺とその麓を流れる「清瀧川」とを中心に、背後の「栂尾高峯」などを描き、山々や特徴ある岩、滝などを赤線で囲って寺領を示している。

「絵図のコスモロジー 上・下巻(葛川絵図研究会編)」「中世荘園絵図大成(河出書房新社)」では、絵図に描かれた山の稜線や滝などが現在のどこになるのかを現地調査して、赤線の寺領範囲を推定している。「清瀧川」は今も「清滝川」であり、「神護寺」「高山寺」も当然同じ場所にある。

高山寺絵図の特定されているもの:「菩提瀧」「毗沙門瀧」

「菩提瀧」は右端にやたらと大きく描かれている。今も中川に菩提の滝というのがあり、観光名所の一つとして案内板が設置されている。絵図のように大きな岩山から流れ落ちる滝ではなく、10ml強の沢の中腹にある滝。

「毗沙門瀧」は、高山寺絵図に文字だけ記載されている。今の毘沙門谷にある滝と思われ、中腹にある2つ滝のうちのどちらかでいずれもそこまで大きい滝ではないが、少なくとも「菩提瀧」よりは大きい。「毗沙門瀧」は寺領内にあり、境界の目印でもないため、描く必要がなかったと思われる。
三幅の絵図から現地比定されている高山寺絵図「菩提瀧」「毗沙門瀧」、小野山絵図「両岩」「雲心寺舊跡壇」などを書き足すとこんな感じ。

高山寺絵図の特定できていないもの

一方で「絵図のコスモロジー」「中世荘園絵図大成」で特定されていないものとして、高山寺絵図中の「沓石」「瀧尾離尾」「二子石」がある。

これは自然の地物なので、現在も見た目が似たものが山中にあるかもしれない。推定される場所は本に書かれているが、余り興味がなかったのか、現地調査などはしていない様子。
図の点線の円周辺に「沓石」「瀧尾離尾」「二子石」があるかもしれないが、見つけてもそれだと証明するのは難しいでしょう。